不動産の売却を考えている方は、これまでに「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」という言葉を見たり聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。見聞きしたことはあるけれど、難しい漢字が並んでいて、なんのことかさっぱりわからないと感じる方も多くいらっしゃるでしょう。そこで、ここでは瑕疵担保責任について詳しく説明していきます。瑕疵担保責任に関しては、不動産売却の契約をする際に大切なポイントとなります。不動産売却を考えている方はぜひ最後まで読んで、後悔のない契約をしてください。

そもそも瑕疵とは?

瑕疵とは、キズや欠陥のことです。ここで言う瑕疵とは、注意をしても見つけられないような欠陥のことです。例えば、洗面台の鏡が割れていたり、蛇口が壊れていたりするとします。注意して不動産を見ていれば、買主がこうした欠陥に気づくはずです。不動産売買の契約をする際に売主は、欠陥がある分だけ安くしたり、受け渡し前にこの欠陥を直したりといったような対処をすることになるでしょう。この場合、買主は欠陥がある(あった)ことを承知で不動産を買うということになるのです。しかし、契約の際に買主が気づいていない欠陥もあります。例えば、シロアリ被害については買主が注意を払っても欠陥に気づくことはほとんどないでしょう。このように隠れていて普通に注意している程度では発見できない欠陥のことを瑕疵と言うのです。

事故物件は瑕疵とみなされる

瑕疵は物理的な欠陥だけではありません。例えば、対象となる不動産が事故物件だった場合や、暴力団事務所が近くにある場合などは、精神的な面での欠陥があると認められます。物理的な要因だけでなく精神的な要因も瑕疵となるのです。

瑕疵担保責任とは?

瑕疵担保責任とは、瑕疵に対して売主が持つ責任のことで、買主の権利を守る制度のことです。民法や宅建業法(宅地建物取引業法)、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)といった法律で定められていることもあり、買主から請求を受けた際には、売主は誠実に対応する責任があります。それでは、瑕疵担保責任のポイントを以下に見ていきましょう。

  1. 買主が請求できる内容
    瑕疵を見つけた場合に、買主は売主に「損害賠償」と「契約の解除」を請求することができます。瑕疵の程度によって、修理費や慰謝料をもらうのか、あるいは売買契約を結ぶ前の状態に戻すのか決めることになるでしょう。
  2. 買主が請求できる期間
    買主が売主に「損害賠償」、「契約の解除」を請求できるのは、瑕疵を見つけてから1年以内です。これを過ぎると請求する権利がなくなります。
  3. 瑕疵は隠れた欠陥
    繰り返しになりますが、瑕疵は隠れていて簡単には発見できない欠陥のことです。家の基礎や屋根などにあって簡単には発見できない欠陥が対象となります。それ以外の欠陥、例えば洗面台の鏡が割れていて使えないといった欠陥に関しては、瑕疵には当たりません。
  4. 故意・過失がなくても売主の責任
    瑕疵担保責任は、無過失責任と言われていて、売主が悪意を持っていなくても、瑕疵に対する責任を負わなければなりません。つまり、「売った際に過失はなかった」、「あれほど注意を払って欠陥がないことを確認した」と主張したとしても売主の責任になるのです。
  5. 責任を取る期間
    民法では、責任を取る期間が決められていません。そのため、特に取り決めをしない場合には、半永久的な権利となってしまいます。ただ、民法167条には10年間権利を行使しないと時効になると書かれています。10年買主がなにも請求しなければ時効になりますが、10年以内に請求し続ければ、権利は守られるということです。

以上のように、瑕疵担保責任とは買主の権利を守るための制度なのです。しかし、買主のための制度だからと言って売主は知らなくてもよいというわけではありません。売主は負担を減らすために、瑕疵担保責任について知っておく必要があるのです。ここからは売主の負担を減らす方法について見ていきましょう。

瑕疵担保責任に期限を設ける

先ほど瑕疵担保責任の5つのポイントを見てきましたが、5番目の「責任を取る期間」には驚いた方が多いのではないでしょうか。ここまで買主が有利なら、不動産を売らないほうがよいのではないかとまで考えた方もいらっしゃるでしょう。しかし、一生責任を取る必要はありません。不動産の売買契約を結ぶときに瑕疵担保責任についての詳細を取り決めればよいのです。売主が個人の場合には、瑕疵担保責任を負わないという契約もできるのです。ただ、基本的には、売主が個人の場合は2~3ヶ月間を瑕疵担保責任の範囲としています。売買契約を結ぶ際には、この数字を目安に瑕疵担保責任の期間を設定しましょう。

瑕疵担保責任の保険で売主の負担を減らす

買主の立場としては瑕疵の修理費を払いたくないので、瑕疵担保責任を取ってもらえる不動産がよいと感じるでしょう。特に、瑕疵担保責任を負わないとなっている不動産には「なにか瑕疵があるのではないか」と疑ってしまうものです。一方の売主側の「できることなら瑕疵担保責任を負いたくない」と考える気持ちもわかりますが、2~3ヶ月ほどでも瑕疵担保責任を負ったほうが売れやすくなるでしょう。

ただ、2~3ヶ月という期間は短いものではありますが、その短い期間に瑕疵が見つかることもあります。場合によっては損害賠償で多くの費用がかかってしまうこともあるでしょう。こうした売主の不安や負担を解消するためにあるのが、「既存住宅売買瑕疵保険」です。この保険に入っておけば、対象となる部分において瑕疵が見つかった際に保険金がおります。対象となるのは、土台や柱などの「構造耐力上主要な部分」、屋根や外壁などの「雨水の侵入を防止する部分」です。その他、保険法人によっては「給排水管路」、「給排水設備・電気設備」が対象となります。

瑕疵担保責任を負わずに済む方法もある

どうしても瑕疵担保責任を負いたくないという方もいらっしゃるかもしれません。瑕疵担保責任が免除される方法は2つあります。1つは不動産の売買契約をする際に、瑕疵担保責任を負わないとすることです。その分、売却のしやすさや売却価格には影響しますが、瑕疵担保責任を負わずに済みます。もう1つが、不動産会社の買取制度です。これは不動産会社に買い取ってもらうというもので、瑕疵担保責任は免除されます。

欠陥に気づいていながら売った場合には瑕疵担保責任は免除されない

先ほど売買契約の際に瑕疵担保責任を負わないとすることで、瑕疵担保責任が免除されるとお伝えしました。しかし、免除されない場合もあります。例えば、売主が瑕疵の存在を知っていながら買主に告げなかった場合です。この場合には、瑕疵担保責任を負わないという契約をしていても、瑕疵担保責任を負わなくてはならないと民法第572条に書かれています。


以上、瑕疵担保責任について詳しく説明してきました。瑕疵担保責任があると、瑕疵の修理費を払うことになるかもしれない反面、高く売却することができるでしょう。瑕疵担保責任を免除するかどうか、あるいは期間をどのくらいにするのかについては売主が判断すべき大切なポイントとなります。不動産を売る際には、これを参考に瑕疵担保責任について考えてみましょう。

 

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